心停止患者に対して心肺蘇生を行う際は心拍再開が得にくい症例ほど高度気道確保(救急救命士によるデバイスを用いた気道確保)が行われやすく(蘇生時間バイアス)、また患者の生存状態や治療内容は時々刻々と変化するため、大規模データベースを解析する際に従来の傾向スコア・マッチング法では十分な対応関係が得られません。
そこでCC-RESUSのグループでご活躍の井澤純一氏(現ピッツバーグ大学)、北村哲久氏(現大阪大学)、石見拓教授らが時間依存性傾向スコア連続マッチング(Time-dependent propensity score sequential matching)を用いて高度気道確保の有効性を検証しました。
総務省消防庁の全国ウツタイン登録データベースを用い、時間を1分単位に区切り、同一時点における高度気道確保のなされやすさを揃えて高度気道確保の実施群と非実施群の転帰(1カ月生存または1カ月以内の生存退院)を比較しました。その結果、電気ショック適応例(心室細動または無脈性心室頻拍)では高度気道確保は有効性は認められなかった(調整済み便益比:1.00、95%信頼区間:0.93〜1.07)のに対し、非適応例では有意な改善(調製済み便益比:1.27、95%信頼区間:1.20〜1.35)が得られました。
この研究はBMJ(2019年3月2日発行)に掲載されましたが、これによって心肺蘇生に関する国際ガイドラインの記述が書き換えられる可能性があります。
Pre-hospital advanced airway management for adults with out-of-hospital cardiac arrest: nationwide cohort study BMJ 2019; 364
https://www.bmj.com/content/364/bmj.l430